マンションの外壁塗装の疑問

外壁の劣化対策として「庇」は有効か?

世界最古の木造建造物群として知られている奈良の法隆寺は、
1993年(平成5年)、ユネスコの「世界文化遺産」に登録されています。

 

法隆寺の創建は607年ですが、670年に消失したので、
7世紀後半に再建されたという説が定説になっています。

 

法隆寺の「金堂」に使用されている木材の「年輪年代測定法」による伐採年は、
690年代のものが存在することが、奈良文化財研究所の研究で明らかになっており、
再建は700年頃と考えられています。

 

700年頃の再建であったとしても、
法隆寺は、木造でも1300年以上耐久しているということを実証しています。
つまり、木造を長持ちさせる技術は、1300年前から確立していたといえます。

 

木造を長持ちさせる技術とは

 

法隆寺の木造建物を長持ち足せることができた1300年前の方法は、
それほど複雑なものではありません。

 

単に、木材を湿気から守るということだけです。

 

木材を湿気から守る対策として、
屋根を大きく張り出し、柱や梁に雨水をあてないこと、
土台は石を積んで高くし、雨水で濡らさないようにすることなど、
土からの湿気とシロアリを遮断するという技術が具体的に用いられています。

 

木材は乾燥した状態に置くことで、
腐る原因になる腐朽菌は活動できなくなるので、
腐ることがありません。

 

解体修理が可能

 

さらに、木造は、一部が腐ってしまった場合は解体修理が可能です。

 

つまり、腐った木材を部分的に新しい材木に交換することが可能であるということです。

 

実際に、法隆寺は、「昭和の大修理」を行っています。

 

昭和の大修理は、昭和9年に始まり、戦争をはさんで昭和60年、
実に51年を費やし、ほぼ再建時の状態に戻しています。

 

昭和24年(1949年)には、「金堂」壁画の模写作業中に火災が起こり、
壁画を焼失したことは有名な話です。

 

石造の場合、必ずしも不可能ということはありませんが、
レンガ造も鉄筋コンクリート造も解体修理は不可能に近いといえます。

 

このように、木造は、解体修理が可能という大きな特徴があります。

 

ギリシャの石造神殿の例

 

ギリシャのバルテノン神殿は紀元前438年に建てられたようですが、
石造として知られている神殿は、昔は木造だったそうです。

 

地中海沿岸にも、神殿を作る大木を産出していた時代があったことが分ります。

 

大木があれば、加工するのに苦労を要する石を使う必要はありませんが、
やがて神殿を作ることが出来るような大木が枯渇し、
やむなく石造にせざるを得なくなったとのことです。

 

ですが、初期の石蔵の神殿は屋根が木造で、
屋根が張り出した、木造時代のデザインを踏襲しています。
そして、軒の飾りまで石で作るようになっても、
屋根を張り出すデザインが残っています。

 

木造の耐久性向上技術はヨーロッパでもアジアでも同じ

 

木造では屋根を張り出し、柱や梁がぬれないように工夫しています。
これは、洋の東西を問わず変わりません。

 

つまり、木造の耐久性向上技術はヨーロッパでもアジアでも同じです。

 

日本の木造様式の最もシンプルな例として、
寺の鐘楼があります。

 

鐘楼を見ると、屋根の張り出し方がいかに大きいかわかるでしょう。

 

鉄筋コンクリートの時代も木造のデザインを踏襲

 

鉄筋コンクリートで建物を造る時代になってからも、
当時の建築家は石造のデザインを踏襲しました。

 

石造は、木造のデザインを踏襲したものですから、
結果的に、鉄筋コンクリートの建物も木造のデザインを踏襲したことになります。

 

「庇」について

 

「和光」や「三井物産横浜ビル」などにも、
最上部にコーニスと呼ばれる「庇」のような飾りがついています。

 

コーニスは、軒蛇腹とも呼ばれていますが、
上裏に母屋、或いは垂木が並んだようなデザインで、
とてもユニークなデザインになっています。

 

このようなコーニスは、一般的にいえば「庇」です。

 

雨水で外壁を濡らさないという機能を持っている「庇」は、
「鉄筋コンクリート造の耐久性からみると極めて重要です。

 

外壁の仕上げ材はぬれると劣化が早まり、
内部の鉄筋が発錆する原因にもなります。

 

鉄筋が発錆して生じる腐食損傷を防止するためにも「庇」はとても重要なのです。

 

ですが、最近は、「庇」があるマンションをあまり見かけなくなっています。

 

それは、鉄筋コンクリート造では、
コストアップになる「庇」は必要ないという考え方になったためです。

 

1970年代の「庇」の仕上げはモルタル塗りでしたので、
外壁に比べると「庇」の先端部で鉄筋の腐食損傷が生じやすいという傾向がありました。
外壁を濡らさないようにと保護している「庇」自体は、
濡れるので劣化しやすいのです。

 

近年の鉄筋コンクリートマンションなど、大規模修繕工事では、
大庇も小庇もウレタン系塗膜防水材を塗布し、防水するのがスタンダードになっています。

 

塗膜防水材で防水すると、コンクリート内部に対する雨水の侵入が防止されるので、
大庇や小庇の鉄筋の腐食損傷が生じにくくなるという効果があります。