マンションの外壁塗装の疑問

外壁の石の劣化現象

マンションの仕上げ材として石を使用する例は、
1980年代までは殆どありませんでした。

 

ですが、最近のマンションは仕上げが高級になって、
特にエントランス廻りは、
花崗石や大理石などの石で仕上げるマンションが多くなっています。

 

内装材として使用する石の耐久性は、半永久的と考えられています。

 

外装材として使用する場合の耐久性も、
100年や200年は大丈夫であると思われる状況です。

 

和光

 

たとえば、「和光」など80年経った例で見てみると、
外装の仕上げは御影石(花崗岩)で、数箇所の欠落は見られますが、
欠落など損傷の原因は、戦災や近隣の火災などの影響を受けているもので、
まだまだ100年や200年は大丈夫だと思われる現状です。

 

三井物産横浜ビル

 

三井物産横浜ビルも100年経っていますが、
外壁の基壇部は「和光」と同じ御影石で仕上げられています。
この三井物産横浜ビルの御影石も、軽微なひび割れが見受けられるものの、
全体的には建材で、こちらもあと100年、200年は大丈夫だと思われる現状です。

 

明治神宮外苑(絵画館)

 

「和光」よりも古くに建てられた、
1926年(大正15年)竣工の「明治神宮外苑(絵画館)」も、
外装材の御影石(万成・赤)は創建以来、
完全にメンテナンスをしていない状態で経過しています。

 

これほどの長い間、
一度も全面にわたって足場を架けたことがない建物は、
前例がありません。

 

ただ、地上から見える中央のドーム屋根は、
屋上を含めて、ウレタンゴム系塗膜防水工法で防水改修をしています。

 

 

「明治神宮外苑(絵画館)」は、
明治時代の主な出来事を80枚の壁画にして展示している美術館として、
現在も立派に機能しています。

 

外装の石を先に積み、内側に配筋した後、
石を型枠代わりにしてコンクリートを打設する方法で造られています。
外装には、一部の汚れが見られますが、あまり気になりません。

 

「明治神宮外苑(絵画館)」の建物には、エイジングな雰囲気が漂っています。

 

エイジングとは、年代を経た雰囲気があるという意味です。

 

東京大学(安田講堂)

 

明治神宮外苑(絵画館)よりも1年前に竣工した東京大学(安田講堂)は、
本来の外装はタイル張りで、エントランスが砂岩で造られています。

 

この東京大学(安田講堂)の砂岩の部分は、
風化というべき劣化現象が見られます。

 

大きく欠損している箇所は、
石同士を固定するために埋め込んでいる鉄製「かすがい」の
発錆が原因となっています。
つまり、コンクリートの鉄筋腐食損傷と同じ現象が生じているのです。

 

鉄筋の腐食は、建物にとって致命的です。
最近の建物には、固定するものには、
鉄製ではなく、ステンレス製のものを使っています。

 

花崗岩と砂岩の耐久性の違い

 

花崗岩は、極めて耐久性の高い石であり、
100年経っても劣化現象は現れない石であることが分ります。

 

ですが、砂岩は100年程度たつと風化がみられてしまいます。
また、関東地方で塀によく使用される大谷石は、
砂庭に近い堆積岩なので、風化した例を見かけることがあります。

 

大理石

 

大理石は、石灰石の一種で、
長い年月が経つと表面が雨水で侵食されることが知られているので、
外装材として用いられることは殆どありません。

 

石灰水が溶け出してできる空洞が、鍾乳洞であることはよく知られています。

 

外装の石張り

 

外装の石張りは、1980年ごろまでは「湿式」と呼ばれる工法で施工されていました。
その後は、乾式と呼ばれる工法に転換しています。

 

・湿式

 

湿式は、石の裏にモルタルを充填し、
躯体コンクリートに接着させる工法です。

 

湿式は、躯体コンクリートにひび割れが生じると、
石にも生じることになります。

 

・乾式

 

乾式は、モルタルを充填せず、
石は金物で躯体コンクリートに固定するだけで、
石と躯体コンクリートの間は空洞とします。

 

乾式は、石と躯体コンクリートは絶縁しているので、
コンクリートの動きの影響を受けません。

 

地震による被害も少ないように工夫されています。

 

石同士をつなぐ金物(ダボ)および
躯体コンクリートに固定する金物(引き金物)には、
ステンレス製のものを使用しています。

 

以前は、真鍮(しんちゅう)製のものが使用されていましたが、
明治以来、発錆膨張し、石を破損することがないように、
鉄製のものは使用されていません。

 

石の損傷

 

石の損傷例に、「脆性(ぜいせい)破壊」と考えられる損傷があります。

 

損傷は、目地底から上の石がかける状態で損傷するなどします。

 

この石の損傷は、石の温度が上昇すると膨張して圧縮力が生じ、
石と目地モルタルが一体となって圧縮力を伝え、
目地際で目地底より上に出ている石の部分は圧縮力を受けません。

 

このような状態が数年から数十年繰り返されると、
圧縮力を受ける部分と受けない部分の境界で疲労し、
やがて破壊してしまいます。

 

破壊部分に傷があるわけでなく、健全な部分が破壊してしまうのです。

 

この「脆性破壊」は、1970年代にタンカーが沈没する事故で表面化しています。

 

タンカーの場合は、鉄板の金属疲労が関係しますが、
その後、機械部分のセラミックや硬質のプラスチックが
脆性破壊する事も知られるようになりましたし、
動く断層で、岩盤が脆性破壊する事も知られています。

 

これは、材質本来の持っている圧縮力の強さよりも、
はるかに小さな力で破壊する現象で、
外装のタイルでも起きる事があります。